遊星からの探索者Xくブログ

遊星からの探索者X

クトゥルフ神話TRPGライフをより楽しむための色々紹介ブログ

【CoCシナリオ】もっと奏でたい

 目次

1. シナリオ概要

本シナリオはクトゥルフ神話TRPGサプリ『クトゥルフ2010』に掲載された「もっと食べたい」を下敷きに作成した。骨格は「もっと食べたい」であるが、既に知っている探索者でもプレイできる程度には改変している。

 

事件は飲み会の場、友人の一人が奇怪な死を遂げることで始まる。彼は「宮廷が見える」という言葉を最後に、どろどろに溶けて姿を消してしまう。探索者は彼の死の謎を解き明かし、来るべき惨事を防がなければならない。

 

難易度:★★☆☆☆
人数:3~4人
プレイ時間:2~3時間
推奨技能:〈聞き耳〉〈芸術:音楽〉

2. キーパー向け情報

外なる神の従者は、神々らの宮廷で日々音楽を奏でて狂騒に浸っている。神々らを楽しませるために、観客となる人間の魂を捧げなければならない。そのため従者の一体が探索者の街へ潜り込み、シンガーソングライター「奏来歌」として変装し活動を始める。目的はライブの参加者を宮廷へ連れて行くことだ。

 

その儀式の練習台として、ジャーナリストの「石村圭介」が狙われる。奏は石村に「外なる神の従者」の音色を聞かせ、「黄の印」で儀式を発動させる。儀式の影響下にある人間は正気度が0になると魂が宮廷へ連れて行かれるのだ。石村が探索者の目の前で死亡することで、陰謀が明るみとなる。

3. 主なNPC

「石村圭介(いしむらけいすけ)」
探索者の共通の友人。芸能界のゴシップ関係を取材しているフリーのジャーナリスト。音花市で活動するシンガーソングライター「奏来歌」を取材した際、彼女に生贄の練習台にされる。

 

「奏来歌(かなでらいか)」
インディーズのシンガーソングライター。その正体は「外なる神の従者」であり、外皮を被って人間の振りをしている。宮廷のハスターに人間の魂を捧げる役目を背負っている。目的は「奏来歌の初ライブで、多くの人間の魂を捧げること」であり、その儀式の練習として石村を利用する。

4. シナリオの導入

探索者は共通の友人である「石村圭介」と飲み会に行く。行き先は彼の行きつけの焼き肉店だ。焼き肉店は大勢の客が並び、繁盛している。店員の声がひっきりなしに聞こえ、この店の人気ぶりが伺えるだろう。探索者と石村は予約していた個室へ案内され、飲み会を満喫する。

 

2時間ほどたってお腹が膨れた頃、探索者は石村の異常に気付くだろう。石村は「さーて!もっと食べるぞー!」と叫びながら、次々と料理を口にする。それを見た探索者は、奇妙な感覚を覚えSANチェックを行う。成功した探索者は正気度を失わないが、自分自身の食欲がまだまだ衰えてない事に強い違和感を覚える。失敗した探索者は正気度を5ポイント失い、強制的にどんどん食べるRPを行う。これは一時的発狂と見なし、精神分析が可能である。石村に対して〈精神分析〉に成功すると、彼が極端な躁状態に陥っている事に気づく。

 

そして正気のままの探索者は、「ベキ、バリボリ」という骨を砕く音を聞くだろう。見ると石村が自らの左手に喰いつき、骨ごとかみ砕き咀嚼している。それだけではない。石村の身体がどろどろに溶け始めている。石村は溶けた出した身体に残った右腕を突き刺し、無理やり心臓を掴み出してこう叫ぶ。

「ああ、宮廷だ。宮廷が見え…」

そして石村は心臓以外がどろどろに溶けて絶命する。この光景を見た探索者は1/1D6の正気度を失う。

5. 情報収集

シーンを切りかえて、探索者の一時的発狂を解除した後に店内の調査に移る。以下の情報は、探索者の行動によってか、キーパーの判断で好きな順に公開すること。「石村圭介の遺体」「石村圭介の心臓」を公開したら、店員か警察を介入させてシーンを切り、日を跨いで調査を再開させよう。

 

「石村圭介の遺体」
遺体は心臓しか残されていない。衣服には携帯・財布・鍵が入っている。財布をよく調べると、「奏来歌」の名刺が入っている。鍵は石村が住むアパートの鍵である。携帯を調べると、3日前に『奏来歌』が登録されており、メモには「シンガーソングライター」と記載されている。

 

奏来歌に連絡しても、彼女は「ライブの準備で忙しい」とだけ告げて話を切り上げて電話を切る。以降、電話をかけても着信拒否される。

 

「奏来歌」
奏来歌はシンガーソングライターで、インディーズのアーティストである。口コミやインターネットで根強いファンを獲得している。彼女の日程を調べると、3日前からこの街に滞在しており、ライブの準備をしているらしい。彼女のライブは飲み会の次の日の夜である。〈図書館〉に成功すると、彼女がシンガーソングライターであること以外の過去の情報が一切でない。「奏来歌」は「外なる神の従者」が被っている皮に過ぎないのだ。

 

「石村圭介の心臓」
心臓を調べようとした探索者の目の前で、新たな異変が起こる。突如心臓が動き出すのだ。まるで心臓が生きているかのようである。この心臓の鼓動を目撃した探索者は1/1D4の正気度を失う。〈聞き耳〉に成功すると、店内で流れている曲と心臓の鼓動が連動していることに気づく。その曲が別の曲に切り替わると、心臓の鼓動が止まる。

 

「Lorelei Aibum」
店内で流れていた曲は、CDプレーヤーで流していた奏来歌の「Lorelei Aibum」である。奏来歌のサインが入っている。店長にこのCDの事を尋ねると、3日前に焼き肉店を訪れた本人からサイン入りCDをもらったと告げる。このCDを流してからというもの、お客様が次々と増え(リピーターが特に多い)、今のように商売繁盛しているため、幸運のお守りとして大事にしている。そのためこのCDを持ち出すには〈信用〉に成功しなければならない。心臓が動いたときに流れていた曲は奏来歌の「恋するローレライ」である。 

 

このCDの「恋するローレライ」には、奏来歌によって細工が施されている。TVや配信されている曲と異なり、「従者の歌声」が混じっているのだ。〈聞き耳〉または〈芸術:音楽〉に成功するとその違いを聞き分けることができる。「従者の歌声」は魅惑的な音色で、聞くだけで頭がぼんやりし、複雑な思考ができなくなる。

 

「恋するローレライの歌詞(抜粋)」

------------------------------------------

うるわし乙女は あなたを惑わし
宮廷の歌を 口ずさむ
ささげ ささげ あなたの ハート 

恋煩う乙女は 皆を連れて
魔法の歌を 口ずさむ
ささげ ささげ 皆の ハート

------------------------------------------

資料1:恋するローレライの歌詞(抜粋)

 

「名刺の秘密」
奏来歌の名刺の裏には、見た事も無い、ロールシャッハテストに似た紋様が描かれている。注意してみると、言いようのない不安が心をかき乱すだろう。〈アイデア〉に成功すると、その紋様が流動し探索者を惑わすように見え、正気度を0/1D3失う。〈クトゥルフ神話〉に成功すると、この紋様は「黄の印」としてカルト教団の間で知られていることがわかる。

 

この印は奏来歌(外なる神の従者)が仕掛けた儀式のギミックである。印の影響範囲にある人間が、「従者の歌声」を聞くと、強制的に一時的発狂「躁状態」となる。この効果で正気度が0になると、その魂はハスターの宮廷に連れて行かれ、永遠なる狂奏の観客として囚われてしまう。石村は儀式の「練習台」であり、この街で行われるライブが本番なのだ。詳しくは「6. 殺人のトリック」を参照すること。

6. 殺人のトリック

探索者がサイン入りCDの「恋するローレライ」を聞いた際、その場にいる誰かが「奏来歌の名刺」を持っていた場合に限り、次のイベントが発動する。耳栓など対策をしていた探索者もこのイベントが起こる。脳内に直接、曲が流れてくるような錯覚を覚えるだろう。

 

曲を聞いた探索者はSANチェックを行う。失敗した探索者は、名刺に刻まれた印の効果で正気度を5失う。強制的に一時的発狂「躁状態」となり、もう一度この曲を聞きたいという強迫観念に捕らわれる。曲をリピートするたびに心臓の鼓動が高鳴り、正気度を5失い続ける。この効果で正気度が0になったら石村と同じ末路を辿るため、その場にいる探索者が全員発狂してしまった場合、1~2回のリピートで発狂を解除してあげよう。

7. 石村のアパート

石村は住宅街のアパートに暮らしている。警察を呼んでいた場合、刑事らが一度アパートを調べているだろう。遺体から持ち出した鍵を使うか、アパートの大家を説得するなどで入ることができる。〈鍵開け〉や窓ガラスを破る事も可能だ。部屋の中を物色すると、石村の日記とICレコーダーを入手する。

 

「石村の日記(抜粋)」

------------------------------------------
〇月〇日
奏来歌に焼き肉店で取材。名刺をもらう。
〇月△日
昨日の焼き肉店の味が忘れられない
やはりあの店の焼き肉は美味い。昼も夜も食事が進んだ
△月〇日
これで4度目だ。あの店もいつのまにか繁盛していた。先に予約を取らねば。
焼き肉店に行こう
焼き肉店に行こう
△月×日
もう毎日のように焼き肉店に通っている。やめられない。僕は一体何をされたんだ?
焼き肉店に行こう
焼き肉店に行こう
焼き肉店に行こう
(探索者の名前)と焼き肉店に約束の行こう日だ

------------------------------------------

資料2:石村の日記(抜粋)

 

この日記を読んだ探索者は0/1の正気度を失う。

 

「ICレコーダー」
部屋に置いてあるICレコーダーには、焼き肉店のガヤの音を背景に、石村と奏の会話が収録されており、取材記録であることがわかる。〈聞き耳〉に成功すると、ガヤに混じって「恋するローレライ」が流れていることに気づく。〈アイデア〉に成功すると、奏が石村に名刺を渡したことがわかる。

 

「石村と奏の会話(抜粋)」
------------------------------------------
石村「奏さんがアーティストになったきっかけは?」
奏「私は従者なの。神様に歌と観客を捧げているのよ」
石村「神様というと?」
奏「宮廷に住んでいる方々。貴方も宮廷に招待してあげる」
石村「ああ、もしかして4日後のライブですか?」
奏「ライブの参加者も一緒に連れて行くわ。神様が少しでも喜ぶために」
石村「ライブへの意気込みを聞かせて下さい」
奏「神様を怒らせないように頑張るわ。神様は演奏が中断されると、凄く怒り狂うの」
石村「演奏は失敗できないということですね」
奏「私自身が生贄にされちゃうかも」
------------------------------------------

資料3:石村と奏の会話(抜粋)

8. 奏来歌の初ライブ

探索者が「奏来歌が石村圭介を殺害した」と気づき、ICレコーダーの会話を聞いたらクライマックスへ移る。まもなく奏来歌がライブハウスで初ライブを行うことを告げよう。「奏来歌を倒す」「ライブを中止させる」「ライブ中に演奏を止める」など、探索者が取る事のできる選択肢は多い。

 

「演奏を失敗させる」
ライブ会場は5、60人程度の観客が入る程度のスペースであり、大して広くはない。地面には「黄の印」が記されており、この会場で奏来歌が「恋するローレライ」を「従者の声」で歌うことで、観客は「躁状態」となり、歌が終わるころには全員正気度が0となり魂が宮廷に連れ去られる。探索者がライブ中に何らかの妨害を加え、奏来歌が歌を止めてしまった場合、以下の描写を入れる。

------------------------------------------
ステージ上の奏来歌が慌てた様子で天を仰ぎ、叫ぶ
奏「申し訳ありません、もう一度、もう一度演奏を!」
しかしその言葉が拒否されたのか、奏の表情が真っ青になると
天井かに黄色い巨大な渦が出現し、嵐のように部屋中をかき乱す
奏が悲鳴を上げると、その口からいくつもの触肢が飛び出し
次に胴体が
最後に醜いヒキガエルのような顔が這い出て、渦に吸い取られる
奏という外皮を被った名状し難い怪物が、奇声と共に渦の中へ消えて行った
そして渦が消えると、嵐が止み静けさを取り戻す
ステージに残されたのは、ぺちゃんこに潰れた奏の外皮だけだ
------------------------------------------

一連の光景を目撃した探索者は1D3/1D10の正気度を失う。現場はパニックになるが、探索者は見事脅威を退けることに成功する。

 

「ライブを中止させる」
ライブが始まる前に中止させた場合、外なる神の従者は奏来歌の外皮を捨てて逃亡する。奏の外皮を発見した探索者は正気度を1/1D3失う。

 

「奏来歌を倒す」
奏来歌の目的は、宮廷に人間の魂を送り賑やかすことである。探索者がその障害となるとわかれば外皮を脱ぎ、襲い掛かって来る。ステータスの通り、火や感電などのダメージでしか倒せないため注意すること。

外なる神の従者 上級の奉仕種族
STR15 CON16 SIZ14 INT16
POW20 DEX16 耐久力15
ダメージボーナス+1D6
武器:触肢*2 70% ダメージ db*2
装甲:なし。ただし物理的な武器では彼らを傷つけることはできない。呪文あるいは魔術的な武器は通常のダメージを与える。1ラウンドに耐久力を3ポイントずつ再生させる。火や雷などのダメージは2倍のダメージを受け、かつ再生できない。
正気度喪失:1/1D10

9. 結末

奏来歌を倒した探索者は1D10正気度ポイント、演奏中止で送り返した場合は更に1D3の正気度ポイントを獲得する。

 

奏来歌を逃がした場合、彼女は別のアーティストの姿となり、いずれはライブを成功させて多くの人間を殺害する。そのニュースを見た探索者は正気度を0/1D6失って物語を終える。

 

探索者が違法行為を行いかつ警察にばれた場合、ライブの成功/中止に関わらず探索者は逮捕・拘留される。もし奏来歌が生存していた場合、彼女は警察官の外皮をまとい拘留所に侵入し、探索者に報復する。探索者は従者の音色を聞かされ一時的発狂に陥った状態で物語を終える。探索者が外なる神の従者に殺害されるか、見逃してもらえるかはキーパーの判断に委ねられる。