遊星からの探索者Xくブログ

遊星からの探索者X

クトゥルフ神話という深淵を覗いてしまい、ミ=ゴに攫われる前に記録を残そうとする探索者の手記

【CoCシナリオ】呪いのメロディー

1.シナリオ概要

本シナリオは2012年夏に行ったセッションで作製したシナリオを、公開できる程度に改変したものとなっている。クトゥルフ神話TRPGルールブックの公式シナリオ「死者のストンプ」から着想を得ている。映画「ペット・セメタリ―」を観れば、死者を蘇らそうとするNPCらの愚かな行為が理解できるかもしれない。


難易度★★☆☆☆
人数:2~3人
プレイ時間:2~3時間
推奨技能:芸術〈音楽〉

 
舞台は現代日本の地方都市、音花市。吹奏楽に力を入れている音花高校で殺人事件が起こる。しかし殺人者は死者であった。探索者らはこの謎を解いて更なる悲劇を未然に防がなければならない。

2.キーパー向け情報

このシナリオはH.P.ラブクラフト原作の小説「エーリッヒ・ツァンの音楽」と関連がある。エーリッヒ・ツァンが書き残した楽譜は闇に葬られたかに思われていたが、その内の数編が世界各地に散らばった。「ツァンの楽譜」の音色を聴いた人間は自殺癖に陥り自害してしまう。しかし同じくエーリッヒ・ツァンが残した楽器で弾くと、逆に死者を蘇らせることが出来る。音花高校に「ツァンの楽譜」と「ツァンのヴィオラ」が揃ってしまい、学生の一人が演奏する事で事件が発生する。 

3.主なNPC

「小倉優斗」
音花高校の3年生で吹奏楽部の部長。資料室で発見した「ツァンの楽譜」が、音楽室の倉庫に眠っている「ツァンのヴィオラ」で弾けることに気づく。彼女である真理の目の前で演奏した結果、真理は自殺癖に陥り自害してしまう。更に楽譜による幻覚を見るようになり、正しくヴィオラを弾いて真理を蘇らせることに執着するようになる。他の自殺した3人は、いずれも小倉のヴィオラの演奏を聞いたためだ。

 

「西野・オニール・真子」
音花高校の1年生で吹奏楽部の部員。真理を蘇らせるために小倉優斗と共に正しい演奏を練習していた。その成果を真理の墓の前で披露したところ、真理が蘇り棺から這い出てくる。しかし蘇った真理は怒り狂った目で、自らを殺した小倉優斗に復讐を果たす。 

4.シナリオの導入

探索者らは顔見知りでも構わない。全員、音花高校で自殺した生徒「西野・オニール・真理」の両親から、自殺の真相を調査して欲しいと依頼される。真理の両親はキリスト教徒の信者だったが、真理の自殺によって信仰に疑問を抱き始めている。両親に真理が自殺する心辺りは一切ない。両親との会話を通じて、以下の情報を開示すると良いだろう。

 

「西野・オニール・真理」
吹奏楽部の3年生。数か月前に音楽室で自殺した。その後両親の意向で、キリスト教の教会墓地に埋葬された。1年生の妹「西野・オニール・真子」がいる。西野・オニール・真子は姉の自殺後に不登校になり、部屋に引きこもっている。

この時点では真子に会うことは出来ない。探索者が何らかの方法で部屋に入ると誰もおらず、真子は両親に秘密で外出していることがわかる(小倉優斗と演奏の練習をしている)。

 

主な調査場所は学校となるため、探索者が学校へ入ることが出来る理由を考えておくと良いだろう。

5.学校での調査①

ここから探索パートに移る。探索者が何を何処で調べたいかによって、NPCを出したり探索場所に情報を設置するなどして、柔軟に情報を開示していく。「追加情報」と記されている情報は、何らかの技能をキーパーが提示して成功者がいれば開示するとよいだろう。
また、小倉優斗は「6.寮での惨劇」まで登場しない。小倉優斗を探そうとする探索者には、イベント発生まで登場しないことを告げた方が良いだろう。

 

「自殺者」
この数か月で、自殺者が4人いる。1人目は3年生の「西野・オニール・真理」で、残りの3人も音花高校の学生である。全員女子という共通点がある。学年や部活に関する共通点は無い。追加情報:自殺した学生は全員、「小倉優斗」に好意を抱いていた事がわかる。

 

「小倉優斗」
3年生で吹奏楽部の部長。周りにも気を配ってくれる良い人。ヴィオラが得意楽器。小さい頃から演奏しており、腕前はある。しかし最近は吹奏楽部に顔を出さずに何処かで練習している。追加情報:小倉は密かに付き合っていた彼女の西野・オニール・真理が亡くなって傷心しているらしい。

 

「呪いのメロディーの噂」
学生の間で流行している噂。4人の学生が自殺する時間帯に、校内で不穏な音楽が流れていたとのこと。追加情報:そのメロディーは何らかの弦楽器による演奏であることがわかる。しかし吹奏楽部の学生に聞いても、このメロディーを弾く事ができる楽器に心当たりがないとのこと。

 

「西野・オニール・真子」
吹奏楽部の生徒に話を聞くと、彼らは不登校になった真子を心配する。追加情報:不登校にもかかわらず西野・オニール・真子をたびたび学校で目撃する生徒がいる。

 

「音楽室」
音楽室を調べても情報は一切出ない。キーパーは暗に音楽室が原因でない事を告げた方が良いだろう。

 

これらの情報が開示された後、次のイベントを発生させる。

6.寮での惨劇

探索者が上記の情報をいくつか入手するか、小倉の住む寮に行くことを宣言した場合にこのイベントが発生する。放課後に学校内で調査を進めていると、探索者らの耳元に、「うわあああ!助けてくれ!」という叫び声が聞こえる。聞き耳に成功すると、寮の一室からだとわかる。部屋に繋がる廊下には、点々と土のついた足跡が残されている。探索者が部屋に踏み込むと、仰向けに倒れて絶命している小倉と、彼の腹に顔をうずめている全身土まみれの女生徒を発見する。小倉を中心に血だまりができ、音楽室は血の臭いと腐臭が入り混じってる。この光景を見た探索者は0/1D3の正気度を失う。アイデアに成功した探索者は、「呪いのメロディー」の噂と違って何の音色も聞こえなかったことに気づく。


2人を調べると、小倉の腹が裂けて出血したショック死であることが分かる。技能を振るまでもなく、女生徒が『腐乱死体』であることもわかるだろう。女生徒の口の周りには小倉の血と臓物の欠片がべったりついている。顔をよく見ると「西野・オニール・真理」だと気づくだろう。アイデアに成功すると、この腐乱死体が小倉の腹を食い破って殺したと気づき1/1D4の正気度を失う。追加情報:腐乱死体は『埋葬された死体』だとわかる。ベランダの手すりに楽譜が1枚引っ掛かっている。

 

これらの情報を調べたら、警察が到着しシーンを終了する。

7.学校での調査②

警察で事情聴取を受けた次の日、学校は事件を受けて休校となっているが学生らは部活動のために学校へやってきている。再び探索パートに移る。

 

 「ツァンの楽譜」
寮に落ちていた楽譜は、ヴィオラの楽譜で「ツァン」と英語でサインされている。古い羊皮紙で、数十年前に作成されたものだとわかる。追加情報:この楽譜に書いている音域は通常のヴィオラでは出せないことがわかる。
また、この楽譜を持ち続けていると、ときおり老人(エーリッヒ・ツァン)が一心不乱にヴィオラを弾いている幻覚を見るようになる。見るたびに1/1D3の正気度を失う。更に持ち続けていれば、老人が演奏を強要するようになり、持ち主は演奏したいという衝動に駆られ続ける。

 

「小倉優斗」(寮)
小倉は寮に住んでおり、彼の部屋には骨董品のようなヴィオラが置かれているが、昨日使用された形跡はない。
探索者の誰かが「ツァンの楽譜」通りに弾いて芸術:音楽に成功すると、その音色を聞いた他の探索者は直ちに1/1D6の正気度を失い、発狂した場合は強制的に自殺癖を患う。なお「ツァンの楽譜」通りに弾いた音色は、耳を塞いでも聴覚を失っていようと意味はなく、はっきりと聞こえてしまうだろう。

 

「小倉優斗の日記(抜粋)」
探索者が小倉の机を調べたり、彼の寮を訪れて調査するかもしれない。その場合にこの情報を開示する。
〇月〇日
資料室で興味深い楽譜を見つけた。倉庫にあるヴィオラでなら弾けるかもしれない。いつか真理に聞かせてみよう。
〇月△日(真理が自殺した日と同じ)
最悪だ。僕が殺した。殺したんだ。
〇月□日
老人が俺に助言してくれた。このヴィオラを完璧に弾くことが出来れば誰も死なず、逆に死者を蘇らせることが出来ると。楽譜のコピーともう一挺のヴィオラは真子に渡し、協力を求める。彼女には才能がある。
日付無し
また告白しに来た女が死んだ。もっと練習が必要だ。完璧に弾かなければ!完璧に弾けば誰も死なないはずだ!真子が足を引っ張るから、上手く弾けないんだ。これからは一人で弾こう。

 

「西野・オニール・真理」(キリスト教会での情報)
キリスト教会墓地にある西野・オニール・真理の墓は何者かによって暴かれており、土が掘り返されたように荒れている。追加情報:土の中の棺は内側から破られており、掘り返された土もよく見ると蘇った真理が這い出たような跡がある。周囲の足跡をよく調べると、真理の足跡に加えてもう1つの女性と思われる足跡が見つかる(真子の足跡)。

 

「西野・オニール・真理」(警察署での情報)
死体の胃から腸の一部を発見。死体はずっと監視しているが、動く気配無し。

 

「古いヴィオラ
吹奏楽部の生徒に「ツァンの楽譜」の事を聞くと、高校の資料室から出てきた楽譜で、吹奏楽部のOBが残した品だろうと告げる。また、この楽譜の音楽を弾くことができるかもしれない骨董品の存在、錆びた二挺のヴィオラについて話す。1年前ボランティア団体から寄贈されたが、音域がおかしく欠陥品だと思われたので、音楽室の隣の倉庫に保管されていると告げる。しかし倉庫には件の楽器はいずれも無く、誰かが密かに持ち出していることに気づくだろう。

 

「資料室」
「ツァンの楽譜」について調べると、以下のレポートを発見する。
OBのレポート
『この楽譜は、特別なヴィオラでしか弾くことが出来ないようだ、あらゆる文献を探したが、分かったことは「ツァンの楽譜」の恐るべき言い伝えだけだ。特別な楽器で楽譜通りに演奏すると、死者を蘇らせることが出来るらしい』

8.罪の告白

探索者が「真理を蘇らせたのは真子」であると気づいた場合、物語はクライマックスに移る。
真子を探すと、学校の屋上でヴィオラを持った彼女を発見する。真子は「私はただ、姉さんに聴かせたかっただけなの。でも蘇った姉さんは、姉さんじゃなかった。こんな事になるなんて…けじめをつけます」と告げ、ヴィオラを弾き始める。その音色を聞いた探索者らは探索者は直ちに1/1D6の正気度を失う。発狂した探索者は、彼女の音色が地上のどの音とも全く似ても似つかない、異界の魔王とその廷臣たちの前で永遠に奏で続けるための音楽だとわかる。探索者が真子を取り押さえたりヴィオラを破壊しても、しばらくして屋上に「真理の腐乱死体」と「小倉の死体」がゾンビとして登場する。死者が蘇り、生者を襲う光景を目撃した探索者は1/1D8の正気度を失う。その後ゾンビは真子を食い殺そうとして戦闘に入る。

ゾンビ
STR15 CON15 SIZ11 INTなし POW1 DEX7 耐久力15
ダメージボーナス+1D4 
噛みつき 60% ダメージ1D3+db
装甲:なし。貫通武器は1ポイントのダメージのみ。武器によるダメージは半減。頭部を攻撃された場合は即死。

真子
STR6 CON10 SIZ10 INT12 POW10 DEX8 耐久力8

9.結末

ゾンビを倒した探索者は1D8正気度ポイント、真子の命を救った探索者は1D3の正気度ポイントを獲得する。また、二挺のヴィオラと楽譜は破壊しても構わない。しかし両方とも複製品が世界各地に散らばっており、いずれ何処かの地域で同じ事件が発生するだろう。

 

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クトゥルフ神話TRPGを始めてからしばらくは、サンプルシナリオだったり配布されたシナリオを改変して使っていた。そして本格的に自作した最初の作品がこの「呪いのメロディー」だった。自作とはいっても当然いくつかの下敷きがあるものだ。当時はとても良い出来だと自画自賛していたが、今見返すと矛盾が多く、手直しするのに苦労した。ただ、6年前も今も、私が好きなタイプは調査型シナリオだということを改めて確認できた。